大好きな人に別れを告げられた時、とても苦しくて、過去の自分を責めてみたり、あえて目を背けてみたり、様々な想いと悲しみが溢れてくると思います。
失恋した時、そして今、あなたはどちらの気分でしょうか?
A:悲しみを消化し受け止めたい。別れとしっかり向き合いたい。
B:過去は過去。自分磨きをし、前に進みたい。
Aのあなたは、『別れの言葉を私から』
Bのあなたは、『別れてよかった』
を読んでみてください。
あえて反対の気分の一冊を手に取り、荒療治するのもアリかもしれません。
A:唯川恵『別れの言葉を私から』
直木賞作家であり恋愛小説の名手・唯川恵さんのハーフ・ノベル、ハーフ・エッセイ。
短編小説の後にそのテーマに沿った唯川さんのエッセイが掲載されています。
テーマは、三角関係、仲間、遠距離恋愛、永すぎた春、女友達、同棲、仕事、不倫の8つ。
どれも、恋愛とは切り離せないテーマですね。
忍び寄る別れの気配、男性の素っ気なさ、狡さ、弱さ、優しさが痛いくらいリアルに描かれています。
どの短編も主人公たちがその後どのような結末を迎えたかはハッキリとは描かれていません。
読み手次第なのです。
どんなに過去を思い出し悲しくなっても、恐れず読み進めてほしいのです。
「おわりに」の、全ての恋に傷つく女性へ向けられた唯川さんのメッセージまで、なんとか読んでみてほしいのです。
そして、自分なりの結論を出してほしいな、と思います。
唯川さんのエッセイ部分は、彼女の経験値なのか、人柄がなせる技なのか、心に響くものばかりです。
そんな中、特に刺さった言葉をご紹介します。
未練とは、結局、恋の燃え残しです。それがくすぶり続けて、彼を諦められずにいるのです。
「三角関係」
そんなものを残さないほど、燃えつきてしまいましょう。
私は、人は変わるから価値があると思っています。
「仲間」
そして同時に、変わらない自分を守るために、手入れを怠らない人が好きです。
何かのせい、誰かのせいにしてしまうと、あなたの恋はちっともあなたの血や肉になってくれません。
「遠距離恋愛」
恋は成就させることが最大目標であることは間違いないけれど、壊れた恋をちゃんと引き受けれられる女性にも、私はなりたいと思っています。
読み終わる頃には、タイトルから伝わってくるような凛とした姿勢と、恋を受け止める覚悟がほんの少しでも湧いてきているはずです。
あの時こうすれば良かった、という後悔はもちろん押し寄せてくるでしょう。
けれど、この恋愛を無駄にしてはいけないな、という前向きな気持ちにさせてくれる一冊です。
B:内館牧子『別れてよかった』
強烈なタイトル。
けれど、一度くらいは(たとえ強がりでも)思ったこと、誰しもあるのではないでしょうか?
多くのテレビドラマなどを手がける脚本家・内館牧子さん。
1996年に刊行されたエッセイですが、内館さんの潔さ、明るさ、面白さで時代を感じさせません。
このエッセイには、様々なタイプの男性が登場します。
どの男性も、内館さんにじっくり分析され、ユーモアたっぷりにバッサリ切られ、私たち女性の見る目を養ってくれます。
そして、一人になった時の時間の使い方、楽しみ方を存分に教えてくれます。
恋愛以外にも内館さんのかっこいい生き様が伝わってくるようなエピソードや考え方が盛りだくさん。
そんな内館さんの美学満載の本書で、私の好きな言葉をご紹介します。
「男運のいい女」になるには、生きていることを面白がるに尽きる。男から幸せをもらうことだけを「男運のよさ」と思っているから、自由に動けない。男から不幸をもらうことも「男運のよさ」だと面白がってしまえば、短い人生は鮮やかな花になる。
『別れてよかった』
スパイスというのは「ここ一番に一振り」が鉄則。
『別れてよかった』
別を向いた男には塩でもまけ。
元彼を見返すための自分磨きが、いつしか新しい恋を呼んでいた、なんてことありますよね。
人生の大先輩から、何も気にすることなんてないわよっ!さ、旅行でも行きましょう!と背中を叩いてもらったような、爽快な読了感。
どんどん前に進んでいくあなた、うっかり立ち止まりそうなあなたの背中を押してくれる一冊です。
まとめ
どちらがあなたの今の気分にフィットしたでしょうか?
今、恋に悩んでいないあなたも、これから恋をするあなたも、今後のために学びとして読んでみるのもおすすめです。
私も、過去の恋愛を苦々しく反省しつつ、もっとこの2冊の本に早く出会っていたらな〜と思ってしまいました。
苦しみの真っ只中にいる方には、どんな慰めの言葉も、励ましの言葉も届かないことがあります。
だって、本当にその時は辛いから。世界から光が失われたような、もう他に好きな人なんてできないと思いますよね。
でも、この2冊との出会いで、終わった恋を消化してみたり(それが、やっぱり諦めない!という結論でもいいと思います)、今の自分を楽しんでみてもいいかもしれな、という気持ちに少しでもなってもらえれば嬉しいです。