愛って何でしょう。
難しい問いですよね。けれど、誰しもが一度は考えたこと、あるのではないでしょうか。
回答は三者三様でしょうし、正解もないと思います。
けれど、答えを求めたくなってしまうのが人間の性。
ふとした時に訪れる、「これが愛なのかもしれない」という瞬間。
そんな瞬間を大切にしたいな、と思いながら、今回は分かりやすく“愛”がタイトルに入っている恋愛小説をご紹介します。
まだ愛をよく知らない方も、愛とは長い付き合いだ、という方も、自分と似ている愛や、全く知らない形の愛と触れ合ってみてください。
唯川恵『愛なんか』
「ビターな恋愛小説集」という名にふさわしい大人な短編集です。
別れの気配を書かせたら唯川さんの右に出るものはいないのでは?と思うほど、生々しい心情描写の数々。
どの男女もどこにでもいそうで、むしろ私自身かもしれなくて。
つまり、よくある愛の形なのでしょう。
別れによって知る愛、別れの形で分かる愛。
綺麗な別れも、許せなさも、愛の形と教えてくれる一冊です。
角田光代『愛がなんだ』
初めて読んだ時、私の度肝を抜いた一冊です。
果たしてこれは、愛なのか?と思ってしまうような、テルコの異常なほどの執着。
あらすじだけでも分かるテルコの暴走っぷり。
登場人物それぞれが自らの愛の形を貫く姿、もはやあっぱれです。
テルコのぶっ飛び具合にどのくらい共感できる人がいるか定かではありません。
けれども、テルコの考え方や行動の元となる“愛”は、私たち誰しもが持ち得るもので、完全に彼女を変人扱いすることができません。
どこかしら、共感ポイントや似たようなことやってしまったことあるポイントが見つかってしまうのです。
だからこそ、映画化までされ、多くの人に愛されているのでしょう。
(映画では、成田凌さんがマモちゃんを演じたそうで、個人的には想像だけで大興奮でした)
テルコの想いを、愛の最終形態と感じるか、愛とは呼べないと思うか、ぜひご自身の感覚で確かめてみてください。
唯川恵『愛には少し足りない』
またまた唯川恵さん。今度は長編小説です。
本作は、幸せに見える早映の心の奥で燻る不足感を描いた作品。
何もかも順風満帆に見える早映が変わっていったのは、結婚が求めている愛の形ではなかったから、どんな愛でも物足りない性質だったから、どちらなのでしょうね。
愛だけでなく、“幸せ”も答えがなく、難しいなあと唸ってしまいます。
個人的には、ラストの早映の女としての決着の付け方がとても好きでした。
完全に満たされることはこんなに難しいけれど、人は愛を求めることを止められないと痛感させられる一冊です。
村山由佳『ありふれた愛じゃない』
個の意思を尊重するタヒチの暮らしぶりやパートナーへの考え方が、私にとっては非現実的で、本当にありふれていませんでした。
全てのしがらみを解き放ち、タヒチに行きたい!!と思ってしまいましたね。
えー!そんな展開あり?!と思ってしまうような場面もありましたが、何せ「ありふれた愛じゃない」ですからね。許されますね。
社会性や年齢、周りの目に疲れ、思いのまま生きたくなったあなたは読んでエナジーチャージしてください。
尾形真理子『隣人の愛を知れ』
ルミネの広告が有名な尾形真理子さんの短編集。
ルミネのコピー、いつも私はグッとときめくのですが、本作もメモしたくなる文章が盛りだくさんです。
六人が織りなす様々な愛の形。平穏な愛から許されない愛まで。
けれども、みんな一生懸命生きていて、応援したくなってしまうのですよね。
そして、全て読見終えると、タイトルが心に響きます。
家族や友人、恋人等相手を問わず身近な人に愛されていることに、皆さん気付けていますか?
そんな思いを感じ取る一冊でした。
まとめ
ご紹介した5冊だけでも、愛には様々な形があることが分かりますよね。
私もまだまだ自分にとっての正解すら見つけられていませんが、きっと人間にとって“愛”は永遠のテーマなのでしょう(急に壮大)。
子どもや動物、植物などに注ぐ愛もありますが、愛の中でも恋愛が一番複雑で難しいのではないかと思っています。
けれど、人は誰かを愛さずにはいられない生き物だと信じているので、これからも様々な愛の形に小説、現実問わず触れていきたいと思います。
みなさんの愛の形に近い小説があれば、ぜひ教えて下さい。