戸田恵梨香さん、永野芽郁さんW主演の映画『母性』が話題となっていますね。私も予告編を観て気になり、原作を読んでみました。
母娘という関係はなんと閉鎖的で、複雑なんでしょう。身動きのとれなさに苦しくなりつつも、特殊で唯一無二の関係性に夢中になってしまいました。
今回は、そんな難しい母娘の関係を描いた小説を3冊ご紹介します。
湊かなえ『母性』
自らが娘気分を完全に残したまま母となったルリ子。自らの母を愛するあまり、娘にもルリ子とその母との関係をすべて再現するよう強要してきます。
彼女が見ているのは娘ではなく、常に過去の自分と母なんですよね。愛情をこんなにも与えているのに、という重たい自己満足がねっとりと絡みついてきます。
ルリ子と娘、二人の語りで物語が進みますが、お互いが「どうして分かってくれないの」と思っているのが歯がゆいです。
二人が理解し合えなくなってしまったのには環境的要因も大きいですが、やはりルリ子の母への依存が根本的要因に思われます。母という怪物ですね。
ミステリー小説のため、読み進めるにつれ伏線が回収されていき、ラストの解釈は希望か絶望か、お好みの解釈を楽しんでみてください。
小川糸『食堂かたつむり』
田舎に帰った倫子と幼い頃から好きになれない母は相変わらず折り合いが悪く、初めは距離が遠いです。そんな中、1日1組限定の食堂を開くため、食材集めや地域の人々との交流を通し、倫子自信が大人になっていきます。
彼女自信の成長で母親との接し方が変わったことはもちろんのこと、母自身は幼いころからずっと倫子を見守り、愛していることが次第に分かってします。
口下手な母と娘が歩み寄り、少しずつ心を通わしていく様子に胸をうたれました。
すべての母親が愛情表現が得意なわけではないけれど、言葉や行動の節々で、例え時間差があったとしても愛情は伝わると信じたくなる一冊でした。
村田沙耶香『授乳』
表題作「授乳」に登場する母は、狂気的なほど几帳面。心を病んでいるのかと思わされる描写の数々に、ゾッとさせられます。
そんな母を思春期の娘は、同い年だったらいじめてるな、と思うほど疎ましく感じています。しかしそれと同時に母から目を離せない気持ちも伺えます。
そんな中、家庭教師と危険な遊びをしていたのを母にバレた娘は、すぐさま自らの立場をか弱き守られる立場に切り替え母の庇護を受けます。娘の恐ろしい機転に、本作では母より娘が一枚上手であることを痛感。
ラストの娘の行動には母と同じ狂気を感じ、血と環境は争えないのかもしれない、と思わされました。
まとめ
母娘と言っても、その数だけ関係性は違うものですよね。
正解はきっとないのでしょうけれど、お互いが傷つけあう関係性は文章でも辛いものです。
お好きなタイプの母娘の一冊を是非お手に取ってみてくださいね。