現実的な物語と非現実的な物語、みなさんはどちらがお好きでしょうか。
私は、日常の世界だと思って読み進めていたら異常な世界に足を踏み入れていた?!という境目の物語が好きです。
完全なファンタジーではなく、日常に即した異常性が最も恐ろしく魅惑的なのではないでしょうか。
そんな不気味だけれど、惹きつけられてしまう幻想的な小説のおすすめ3選をご紹介します。
田中兆子『私のことならほっといて』
夫の葬儀が終わったと思ったら、夫の脚が部屋にぽつんとあるなんて。さらには意思を持って動くなんて、日常では考えられませんよね。けれど、その村では葬儀屋さんが脚をサービスしてくれるのは暗黙の了解。
自分だけが狂っているのかと思わされる状況、ゾッとしますね。
ルームシェアしていた友人に、自分の香りを盗まれたと思い狂っていく女性の物語も絶妙に異常です。
香りを盗むなんて可能なのか?と冷静に考えてしまいますが、彼女の追い詰められっぷりと友人の変化を見ていると、あながち狂っているだけとは思えないのが面白いところ。
日常と異常のギリギリラインが描かれた一冊です。
彩瀬まる『くちなし』
別れた不倫相手の腕と暮らす、あたかもそれが当たり前かのように話が展開していきます。腕と暮らしている以外は、ごく普通の生活。淡々と語られる彼女たちの日時は、幻想的かつ不気味で異常。
終始靄に包まれたような雰囲気の物語の数々に、現実を忘れ浸ってしまう一冊です。
近藤史恵『ダークルーム』
特にお気入りは、死んだ元彼女に今の彼女がだんだんと似てくる「コワス」という物語。
彼女と元彼女が似ている、ということは同じ男性が選んだ女性なので、まあある話かな、と思いますよね。
この彼女の恐ろしいところは、元彼女しかしらないことを知っていたり、話し方が似てきたりするのです。そして、一緒にいる彼女は今の彼女なのでしょうか…?といった含みのあるラスト。
男性がだんだん追い詰められて狂っているようにも、本当に彼女が何らかの異常現象で入れ替わったようにも感じられます。
どう判断するかが読み手に委ねられているので、読了後もあれこれ考えて楽しめる一冊です。
まとめ
幻想的な物語は、誰に感情移入するかで物語の中の「現実」が変わってきたり、読み手の考える「現実」によっても結末が変わってきたり、様々な解釈ができる点が魅力的ですよね。
私たちの日常も、もしかしたら気づかないところで異常なことが起こっているかも?と日々にワクワクをプラスしてくれる3冊、ぜひ幻想的な世界に浸ってみてくださいね。