年が明け、寒さも深まって来ましたね。こんな時は、身体の内側から温まりたい!
読めばきっと心はぽかぽか、お腹が空くこと間違いなしの冬にぴったりな小説をご紹介します。
小川糸『食堂かたつむり』
食材選びから盛り付けまで、まるで文字から味や香りがしてくるよう!
倫子が扱う食材は、多くが村でとれたものや、自分で育てたもの。森の木の実入り天然酵母パン、サムゲタンスープ、ティラミス、豚を丸ごと使ったコース料理等。
食材集めや緊張感と充実感たっぷりの調理過程、さらには盛り付け、料理を出すタイミングまでが倫子の心情とリンクしながら流れるように描かれています。自分も厨房に立ち、倫子と共に料理をしているかのような錯覚に。コースが終了する頃には、胸いっぱい、お腹はぺこぺこ。
お客様に起こる奇跡の数々
愛する人を失った老女、両思いになりたい高校生、食の好みが合わない男女、施設に祖父を送り出す家族等。「食堂かたつむり」を訪れるお客様たちは、思い思いの悩みを抱えています。倫子が一人一人と向き合い、考案する料理はどれもお客様たちの心や考えをほぐし、一歩踏み出す勇気を与えます。
人は美味しいものを食べる時、本音が話せたり、張り詰めていたものが解けるのかもしれません。それが、自分のために作られたものなら、尚更。
それぞれが晴れやかにお店を後にする姿、とてもほっこり幸せな気持ちになります。
近藤史恵『ときどき旅に出るカフェ』
初めてが楽しい!再現される世界各地の食べ物
ロシアやヨーロッパ、中国といった様々な国のスイーツや飲み物が登場。それらにまつわる豆知識や瑛子の素直な感想が語られるので、知らないものもあれこれ想像しながら楽しめます。
作中に登場する「バクラヴァ」というトルコのスイーツを、偶然読了後に食べる機会があったのですが、まさに瑛子が表現したとおり頭が痛くなるような甘さでした(甘党の私は大満足)。
異国の料理が、瑛子と私たちを遠くに連れて行ってくれます。
各短編のタイトルもとても美味しそうなので必見です。
食べ物にまつわる美味しいミステリー
怪しい婚約者、無くなったお土産、ライバル店の目論見等々、様々な事件が瑛子の周りで起こるように。美味しい食べ物とほっとするカフェの空間が人々の心を癒し、小さな謎を解き明かしていきます。
ちょっぴりビターな謎もありますが、美味しいスイーツで相殺されるので、後味はバッチリです。
原田ひ香『ランチ酒』
下戸でも楽しめる!ご飯とお酒のマリアージュ
ただただお酒を飲むのではなく、美味しいご飯があるからこその「ランチ酒」。
北海道のお寿司と冷酒、牛タンとビール等々、どれも絶対合う!!と言いたくなるような組み合わせばかり(下戸の私でもお酒、飲みたいかも?と思わされました)。何より、翔子の食べっぷりがたまりません。豪快に、食とお酒と向き合って生きている姿が美しい。
そして、どのお店も実在するそうなので、チャレグルで訪れようと思います。お楽しみに!
依頼者との関わりで変化する翔子の心
翔子は愛娘と暮らしたい気持ちは山々ですが、金銭面等、現実的には一人で育てることが難しく、気落ちする日々を過ごしていました。
そんな中始めた「見守り屋」の依頼者たちは、大小様々な問題を抱えています。そんな人々と関わり学んだことをランチ酒中に消化することで、翔子の娘への想いや生き方に前向きな変化が現れます。
娘が暮らす元夫の家を、ひょんなことから一緒に見に行った依頼者の言葉に、グッときました。
ぜひお手にとって確かめて見てください。
まとめ
美味しい食べ物ばかりの小説3選、気になるものは見つかりましたか?
食べ物と悩みは非常に相性が良いようですね。3冊全て、食を通して悩みや謎が解けていく物語でした。美味しいものを食べていると、心がほぐれ、自分や誰かに気を許したり、甘えられるようになるのかもしれません。
みなさんも、美味しい小説と美味しい食べ物を蓄え、寒い冬を一緒に乗り切りましょう!